企業の価値を「子どもたちに必要な学び」へどう変換するか。編集と営業・二人三脚での妥協しない「ものづくり」

「先生から、教育を変えていく。」をビジョンに掲げ、学校教育の変革を推し進めるARROWSでは、同社の中核事業「SENSEI よのなか学」の急拡大に伴い、各部門の採用を強化しています。企業と提携して先生へ提供されるこの完全オリジナルの教材制作において、編集者である制作と営業は1つのチームとなりプロジェクトを進行していきます。企業への企画提案から授業製作まで、どのような連携を取り進めているのか。編集チームのマネージャーを務める南美穂さんと営業チームの田口佳之さんに詳しく聞きました。

企業と先生のニーズを満たす授業をつくるチーム体制

――「SENSEI よのなか学」は商談創出から始まり、ご提案・授業制作・授業実施・効果検証と一連のフローを終えるまで、6カ月以上を要するプロジェクトです。編集と営業が二人三脚でものづくりをしていくというのは、具体的にどのように行うのでしょうか?

【南】採用面接でも「編集と営業の関係はどうなんですか?」というのは、ほぼ必ず聞かれる質問です。その回答としては、垣根のない1つのチームの中で、クライアント企業とのやりとりを営業チームが窓口となって行い、教材の制作を編集チームが行うということです。それぞれ自分たちの領域を尊重し合うという暗黙知があるように思います。ちなみに編集は現場でずっと書いたりデザインしたりといった編集作業に終始せず、企業との定例会議に参加し直接やりとりするし、企業と先生のニーズにズレがあったら、先生にヒアリングし調整していくディレクターの役割ですね。

入社した当時驚いたのは、クライアント企業との調整は営業チーム主体で進んでいくということです。編集は先生のニーズに応えること、ものづくりに本当に集中できます。あとは、出版社の営業と編集の間には、互いの領域を守り合う、といったようなある種の緊張感というか、上下関係のようなものが生まれるようなケースが正直よくある話なのですが、ARROWSではそういったことがないですよね。

【田口】そうなんですね。僕は出版系の会社にいた経験がなくて分かりかねるのですが、ARROWSでは営業と編集がペアですよね。事業構造としてお金を払ってくれるのは企業ですが、学校の教材として先生側のニーズがあるものを作らないといけないし、学校の先生にその教材が届かないとまったく意味がない。クライアント企業を含め最終的に目指すものが同じだから、営業が強いとか編集が強いとかそういう議論になりようがないです。

編集サイドへの印象としては無理難題にも柔軟に対応してくれる。どうにか解決策を見つけようと粘ってくれる。こんなに融通利くのか、というのがいい意味でのギャップでした。僕も授業見学をはじめ先生とのコミュニケーションをとっているので、その視点から見て何か言えることがあったら提案資料や授業プランにコメントすることもあります。

【南】営業チームからの指摘は自分たちに欠けている視点で、ちゃんと理由を言ってくれるのでそのまま取り入れることがほとんどですね。一方で、企業からの要望にNOを言うこともあります。それは、先生とその先にいる子どもの方を向いていない提案のときです。この目線は営業チームとも共有できています。

業務フローとしては、基本的に営業メンバーがアポイントメントを取って初回の商談で企業のニーズと提案の方向性をヒアリングし編集チームに共有してくれるので、その後にある授業プランの提案から一緒に作っていきます。ですから唐突な依頼を受けるということはなく、初期段階から営業チームと共に歩みを進めていくかたちですね。

【田口】頭出しとして、毎日の朝会で「昨日この企業と話してきて、こんなテーマに関心がありそうだったので制作の依頼をするかもしれません」と報告しています。役割分担としては、営業はクライアント企業のどういうビジネス上の課題を踏まえつつ、企業の知見がどのように先生の授業に貢献できるのかストーリー・仮説を描く。編集チームはそれを学校で実現できるのか、具体的にどんなテーマでの授業になるのかを教材に落とし込んでいきます。

例えば食品メーカーの幼児向けのお菓子の場合、小学校低学年まではみんな喜んで食べるものの、高学年になると、「幼い子の食べ物」として認知されているため離反してしまうことが課題だったとします。この、低学年から高学年までをつなぐためのストーリーづくりを営業チームがやり、高学年での授業内容や実現可能性を編集チームが考え、判断していくということです。

この業務をやり始めた当初は「クライアントがAと言っています」と制作にそのまま伝えていましたが、営業はクライアントが言っていることを正しく咀嚼して社内に伝えることが介在価値になります。今は「Aと言っているけど、本来的にはBであるべきじゃないですか」と編集チームに伝えたり、そもそもの課題設定を行います。このように営業の役割を定義し直してから、進行がだいぶスムーズになっていきました。

遠慮なく、フラットに言いたいことは言い合う

――編集と営業で日頃から一緒になってやっていれば、齟齬は起こらないものでしょうか?

【南】認識合わせを徹底するため、2022年の5月頃から、制作が始まったら企業さんとARROWSとの間で週1回30分の定例会議をセットする、ということを始めました。ここには編集のメンバーも参加しています。それまでは、企業さんとのやりとりは営業チーム主体で進めていたのですが、この定例会議をやるようになってからは双方の意図を確認しながら目線合わせし、企業さんも含めてのチーム感が生まれるようになったように思います。

【田口】定例のきっかけは日産自動車さんのプロジェクトでしたね。未来の自動車に関する教材を制作していたのですが、規模が大きい案件でお互いに本気のものづくりとなると、メールと電話が飛び交い、分刻みで修正や提案が入り乱れるようになってしまって。どれを対応してどれを対応していないのかわからなくなってしまったんです。そこで初めて定例会議を開催しようと決めました。

【南】その後2022年7月になり案件数が一気に増えた頃、コロナも世の中でだいぶ落ち着き、これまでほとんどフルリモートだったのが、週2日の出社日ができました。この日にお互いに顔を合わせて細かいことも全部確認できるようになり、圧倒的にコミュニケーション機会が増えたことも仕事を進める上で良かったですね。でも一番のターニングポイントは、同じく7月にKGI(経営目標達成指標)を「授業を届けた子どもの人数」と定めたことだと思います。

【田口】同感です。KGIを定めたことで、それまでは企業のニーズを満たして一部の困った先生を助けられるなら数百人を対象にした授業なども提供していましたが、そうした提案がなくなりました。

営業スタンスも変わりました。この業界にいると、発信力のある有名な先生の動向に着目しがちなのですが、KGIを「子どもの人数」にしたことでマジョリティに届けるということに立ち返ることができた。普遍的な先生のニーズを満たせないと意味がない、例えば「このプロジェクトで一年目の先生を本当に支援できるのか」といったように目指すべき方向性がクリアになりましたね。

――組織内の仕組みに落とし込んでいくことで共通認識が強まったのですね。ARROWSのコミュニケーション上の特徴は何かありますか?

【田口】「フラット」ですね。

【南】えっ、私も「フラット」って言おうと思ってた(笑)。

【田口】なんと。みんなフラットに言いたいことは言いますよね。疑問があれば素直に聞きますし、何でも納得できるまで突き詰めていく。

【南】そうですね。入社してすぐは「自分が質問していいのかな」とか、「みんなの中では周知の事実なのかな」と感じてしまいがちでしょうが、ARROWSではどんどん口に出ししていった方がいい。他社がやっていない領域・事業にチャレンジしているからこそ決まっていないことも多く、話さなければいけないと思っていたけどこれまで機会がなかったということも多い。一人ひとりが何でも発信することで、組織も進化できると思います。

【田口】発信は大歓迎ですね。そのための環境も、毎日の朝会、部門の定例会、日報とたくさん用意されています。週1回は部門の上長との1on1、月1回は社長の浅谷との1on1もあります。浅谷との1on1では組織のバリューに対して「Keep(続けるべきこと)」「Problem(抱えている問題)」「Try(次にトライしたいこと)」をそれぞれ振り返ったり、トピックスや反省、組織に対する意見を言う場になっています。

浅谷がそもそもフラットですからね。1年くらい前から「SENSEI よのなか学」の事業部長を浅谷が兼任するようになってから発信量も変わっていきました。それまでは、正直、何を考えているのか分からないときもあった。それでも少人数ならいいのかもしれませんが、リモートで働く人も増えて、人数も増えていると代表自身の発信量もより必要になってくると思います。

“自分の底が上がる”ような成長が得られる稀有な仕事

【南】メンバーに共通の傾向としては、職種や担当領域を明確に決めずボーダレスに動き回る人が多い。

【田口】先ほど編集チームが先生にヒアリングしていましたが、大事だと思って僕も参加させてもらいました。そのあたりのルールは当然ないわけですし、必要なら入ればいい。まだまだみんながボールを拾い合っていくフェーズだとも思います。

【南】あと個人的には、ARROWSのメンバーやクライアント企業の方々と一緒に仕事をしていると自分の底が上がるように視座の高さと成長を感じられるのが大きなやりがいにつながっています。

また、編集者の仕事って最終的に届けたい人たちの顔が見えずに作る人も多いけど、ARROWSでは、授業見学にもよく行くので、顧客である先生とエンドユーザーである子どもたちの生の声を自分の目で見ることができます。だからこそ、すごく実直でわかりやすいものづくりができている点もこの仕事が好きな理由です。稀有で恵まれたポジションだと思いますね。

【田口】それで言うと自分の成長や貢献によって会社が成長し、さらに自分も成長するという好循環の中で働けるのがARROWSの魅力だと思います。組織も人もエンドレスで成長していける環境がここにはあります。自分の成長、会社の成長、そして社会への価値提供、すべてに対して貪欲な方には、とても魅力的な環境だと思います。これまでいろんな領域で活躍されていた方に、ぜひ新しい仲間になっていただきたいですね。


profile

南美穂|編集チームマネージャ

教科書会社を経て株式会社アルクにて編集者として従事したのち原価部門の事業部長を担当。編集者時代は累計500万部超の『キクタン』シリーズや『ユメタン』(300万部)、『ENGLISH JOURNAL』などの書籍、月刊誌のほかデジタルコンテンツの編集・マネジメントに従事。手がけたコンテンツは200タイトルを超えその対象は胎児から社会人までとオールラウンドな業務領域が強み。海外旅行とピカソが好き。
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田口佳之プロフィール

田口佳之|営業チームリーダー

大学在学中、LOUPE(現ARROWS)の初期にインターンとして参画。大学卒業後、リクルートマーケティングパートナーズを経て、ARROWSに転職。「SENSEI よのなか学」を担当し、企業と学校の課題をヒアリングしながら、企業・先生・子どもたちの三者にとって価値ある企画を立案・実行している。会社が大きくなれば、社会に提供できる価値も大きくなる。いいことしか無いです!趣味は、フィンランド留学仕込みのサウナ。
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