本当に欲しい教材しか先生に選ばれないから、やりがいがある。企業とコラボしてオリジナル教材をつくる編集者に求められること

「先生から、教育を変えていく。」をビジョンに掲げ、学校教育の変革を推し進めるARROWSでは、同社の中核事業「SENSEI よのなか学」の急拡大に伴い、編集者を募集しています。企業と提携して先生へ提供される教材の全体設計・制作を行う編集者は、企業と先生のニーズに応えながら、エンドユーザーである子どもに届けるため、どのような業務に取り組んでいるのか。制作チームのマネージャーを務める編集者の南美穂さんに詳しく聞きました。

教材制作の要はフロンティア精神を持ったプロデューサー

――ARROWSの編集者は「SENSEI よのなか学」の教材プロデューサーという呼び方もしています。担当する業務の全容をまずは教えてください。

私たち編集者の役割は、大きくは「受注前の企業様に対しての授業プランの作成」「受注後の先生向けの教材制作をリードすること」の2つです。1つのプロジェクトあたり、先生への告知まで含めた全工程でおよそ6カ月を要します。

具体的な業務内容をお伝えすると、受注前には営業チームから企業側の知見やニーズの共有を受けた上で、”私たちの事業の顧客”である先生の声と社会情勢などを踏まえてテーマを定めていきます。並行して学習指導要領に照らし合わせて適切な教科や単元を設定し、1コマ45分の授業プランをまとめた提案書を作成します。提案内容を議論する際には、先生にとってその授業は価値があるか、子どもにとって学ぶ価値はあるかを判断軸にしています。

小中高といった校種にかかわらず、社会や家庭科、保健など、よのなかの動きと関わりの強い教科の授業用教材に落とし込むことが多く、そのバリエーションは様々です。たとえば電気自動車をテーマに未来の自動車について考える日産自動車さんの授業や、熱中症予防についてしっかり伝えるサントリーさんの授業、キャッシュレス決済について考えるJCBさんの授業といった具合です。

企業に対して授業を提案時する際は、相手が授業の内容を具体的にイメージできるよう丁寧な提案を心掛けています。案件をお任せいただく場合、大体受注までに3カ月を要します。その後約3カ月で制作を進めていくのですが、提案時に具体的に提案をしておくことで、受注後の進行がスムーズにになります。そのためにも、提案内容の質にはこだわりたいですね。

受注後のプロセスにおいても、丁寧かつ具体的に、を心掛けています。企業とは、定例ミーティングを設けるようにし、意見を擦り合わせながら制作を進めています。対話をしながら、企業の方々からいただく最新の情報やデータを教材に落とし込んでいくイメージです。

また、制作過程では、学校の先生方へのヒアリングも欠かせません。これまで制作経験のない学年や教科などに取り組む際には、定量調査なども実施しています。

わたしたちが制作する教材は、基本的にはクラウド上にアップして先生にお使いいただくので、すべてデータでの提供としています。黒板代わりになるスライドとインプット用の動画、子どもの主体的な活動につなげるワークシート、先生向けの概要資料と授業15分前に教材を渡されても授業ができるよう、授業のスタートから終わりまでのセリフを記載した台本、といったものを制作しています。案件によっては、スタンプや下敷きなどのデータではない教材を手がけることもあります。子どもに学びを最適なかたちで届けることができればよいので、アウトプットに型はないとも言えますね。その意味でも自由度と裁量は高いです。

ゴールドウィン社と共同開発した、高校生向けの教材もディレクションを担当

デザインをはじめ、イラスト、ライティング、動画制作などは、外部のパートナーと連携しながら制作しています。教材制作の要として外部パートナーをディレクションしながら、社内に情報を連携していくのが、ARROWSの編集者の役割ですね。教材の型が決まっていないので、必要に応じて相応しいパートナーを見つけてきてアサインすることができるので、フロンティア精神を持ったプロデューサーのような仕事であるとも言えますね。

好奇心・探究心を絶やさず新しいことを掘り下げ、楽しめる

――教材作りのポイントはどのようなところでしょうか?

子どもたちに、いかに興味を持ってもらえるかが何よりも大切です。授業に動画を活用しても尺が長いと集中力が続かないので、三部構成にして前半・後半に分けたり、登場人物や背景の動きをたくさん入れたり。スライドは1ページに1つの見出しと図版を大きく入れて、一目見てわかるものでないといけません。

また、いろんな子どもたちがいるのは大前提であるため、教える先生が子どもたちの興味関心に合わせて自由に教材をアレンジできるように、パワーポイントのスライドのデータをそのままお渡ししています。先生方の教えるスタイルも様々で、授業の前にテーマに関連したYouTube動画を先に見せたり、統計データを追加する先生もいます。先生向けの概要資料も用意しているのですが、そのなかにも、先生が授業で使えそうなデータや資料をあわせて入れ込むことは意識しています。

企業の強みやノウハウを正しく捉えて子どもたちにわかりやすく教材を作るために、企業やテーマの理解にはかなりの時間を割きます。1つの提案をつくる際に全工程の7、8割くらいはリサーチ、インプットに充てています。商品やCSR活動などから企業理解を深めていく場合もありますし、取り扱うテーマの周辺から調査していくこともあります。

企業や業界、新たなジャンルの知識がどんどん学べる環境ですので、決められた期間の中でベストパフォーマンスを発揮できるように、好奇心・探究心をもって新しいことを掘り下げていくことを楽しめる人が向いていると思います。

また、先生が抱える課題をどれだけ把握できているか、ということも欠かせないポイントですね。先ほど先生へのヒアリング、ユーザーリサーチを繰り返すということをお伝えしましたが、教材制作のプロセスとは別に、先生方のお困りごとを特定するための調査プロジェクトを立ち上げる、といったこともやっています。

ものづくりをしながら、事業にコミットしたい

――リサーチ、企画立案、提案書の作成から授業を完成するためのディレクションと、編集者としての幅広いスキルが求められるのですね。南さんご自身は前職での経験が活かされていると感じますか?

私は前職で教育系出版社の編集者をしていましたが、社内転職のようなかたちで、多ジャンルで様々なアウトプットを一通り経験したことが幸いなことに役立っています。そこでは月刊誌やムックの編集からはじまり、その後は通信講座やeラーニング、動画制作やアプリ開発、動画制作、研修事業などを手掛け、最後は制作事業部の事業部長を務めていました。

小中高の文化・教育ジャンルの責任者をやっていた時期もあります。当時は、オンラインセミナーもほとんどなかったので、年間90日程度は全国各地の先生方と交流するためのセミナーを開催し、終了後には懇親会も行っていました。延べ人数でいくと年間2,000人程度の先生方とコミュニケーションする機会に恵まれたことで、先生が何を望まれているか、何を考えているかを肌で感じられたことはARROWSでの仕事にすごく役立っていますね。

加えて、子どもの英語教育を担当していた期間も長く、学校やご家庭にも取材で頻繁に行っていたので、先生の先にいる子ども、子どもの先にある親御さんが抱えている課題にも勘が働くというのも間接的ですが業務にあたる上で大きな助けとなっています。

前職時代からARROWSのことは「SENSEI ノート」をやっている会社ということでベンチマークにしていたため知っていました。入社のきっかけとしては、転職エージェント経由のスカウトがきっかけでしたが、面接を受けるとこれまでの経験を活かして会社や事業に貢献できそうだと思い迷わず入社を決めました。

ちょうど前職での業務がマネジメント中心になり、新規事業を立ち上げるもののすぐに手が離れてしまう中で、ものを作ることも続けたいし、残りの編集者人生では事業にコミットメントしていきたいと思っていたタイミングでした。給与に関しても有難いことに考慮してくれるので、前職から下がるということはまずありません。

入社してからはものづくりができるのはもちろんのこと、組織を成熟化させて大きくしていくところにダイレクトに関われていることにも面白さを感じています。

やりがいを生み出すビジネスモデル

入社してからの一番のギャップは、教材の顧客である先生からはお金をいただかないというビジネスモデルのもと、制作物を届けるというところでした。届け先が教材を無料で選べるからこそ、本当に欲しい教材しか選ばれない。だから授業を選んだ先生には本当に感謝していただけます。書籍や受託制作物を作っていたときは、お金を払っていただいた読者やクライアントの反応が気になり、納品日にはお腹が痛くなったりしていたのですが、それが今はない(笑)。それどころか、授業が公開されるのが楽しみですね。

もう1つは、制作した教材をユーザーが使っている様子と声を直接見聞きできることで、これが大きなやりがいにもつながっています。そのため、できるだけ授業見学したいと考えていて、多いときで週3回ほど参加することもあります。

制作だけでなく現場にも行ってすべての業務に手が回るのかと思うかもしれませんが、前職のときより稼働時間は圧倒的に少なくなっています。授業で使うスライドは20枚程度。動画も総尺で10分以内。数百ページの書籍や雑誌作りで延々と検証するのと違って、圧縮された分量を期限の中で仕上げていく作業になります。

――制作チームの体制についても教えてください。

現在の制作チームは社員3人で、業務委託の編集者が10人弱。1人あたり大体4つのプロジェクトを担当し、冒頭にお話しした受注までの3カ月くらいの期間で区切って動いていくイメージです。

普段からコミュニケーションの多いチームのメンバー

社員全員にも通じるのですが、制作メンバーに共通しているのは「絶対に諦めない気持ち」を持っていること。何か課題や相談事が生じたときは、チームみんなで声を掛け合いながら、知恵を出し合い、発想転換していく。失敗を失敗にせず、振り返って具体的なノウハウとして落とし込み、共有しながら次に活かす流れも仕組化していて、良いサイクルが回っています。私自身、メンバーにはとても安心して仕事をお願いできるし、自分が困っていたら相談することもよくあります。

マネージャーとして心掛けているのは、メンバーが迷ったときに、きちんと判断できるように普段からコミュニケーションを取ることですね。あとは、自分が一緒に作るということもそうですが、誰かが困っていたら全面サポートし合いながらやっていきたいと思っています。


profile

南美穂|編集チームマネージャー

教科書会社を経て株式会社アルクにて編集者として従事したのち原価部門の事業部長を担当。編集者時代は累計500万部超の『キクタン』シリーズや『ユメタン』(300万部)、『ENGLISH JOURNAL』などの書籍、月刊誌のほかデジタルコンテンツの編集・マネジメントに従事。手がけたコンテンツは200タイトルを超えその対象は胎児から社会人までとオールラウンドな業務領域が強み海外旅行とピカソ好き。