大手教育会社からスタートアップの教材制作へ転身。圧倒的な裁量とスピード感を持ちながら制作現場に立ち続けたい

「先生から、教育を変えていく。」をビジョンに掲げ、学校教育の変革を推し進めるARROWSでは、同社の中核事業「SENSEI よのなか学」の急拡大に伴い、制作チームの編集者を募集しています。教材制作の現場で働く編集者の働き方はどうなっているか。大手教育会社の教材編集を経て、現在は「SENSEI よのなか学」の編集者として活躍する下村智子さんに詳しく聞きました。

大企業からの転職でも、待遇・働き方を諦める必要はない

――下村さんがARROWSに加わってから、まもなく1年半になりますね。どのような考えで現職に就き、働いてみてどう感じているか、今日は本音で語っていただければと思います。まずはこれまでのキャリアと転職の経緯を教えてください。

前職は、新卒で入社した大手教育会社のベネッセで、幼児教育の教材編集を10年ほど務めていました。その間に子どもが2人生まれ、育児休暇を取得。その後、ダイレクトメール(DM)を作り家庭に送付するダイレクトマーケティング営業、ホームページやSNSなどを運営するデジタルマーケティングを3年ずつ担当しましたが、その間も担当領域は一貫して幼児教育でした。

前職で教材編集を離れて数年たった頃、再び編集の仕事に戻りたいと思うようになりました。古巣の幼児教育の編集部への異動も考えましたが、自分の子どもが小学生に上がり、幼児教育の分野はやり尽くした感じもあり、新しい分野に挑戦したいと思い始めていたんです。

ちょうどその頃、前職のつながりで元々知り合いだったARROWSの社長・浅谷さんから声を掛けていただき、これはきっとご縁だなと思い、転職することにしました。ただ、大企業からスタートアップへ転職することに正直不安もあったので、事前に、既に転職した方や浅谷さんをよく知る方に、いろいろと話を聞いたりもしました。

入社した理由はいくつかありますが、特に大きかったのは「教材制作のスペシャリストになってください」と言われたことです。前職では、キャリアを重ねると管理職になることを勧められましたが、私はマネジメントの仕事にあまり興味が持てず、制作の仕事をずっと続けたいと考えていました。ですので、スペシャリストになることは、私にとって願ってもないことでした。

また、小さな会社なので、社内の人たちと合うかどうかは絶対大事だと思っていました。浅谷さんも同じ考えで「全員と会ってください」と言われて、入社前に当時10人ほどいた社員の方全員と面談をしました。お会いしてみると、皆さんフラットで良い方ばかりで、信用できる会社だなと感じました。

現在は制作チームのメンバーとして「SENSEI よのなか学」の教材制作を担当していますが、前職で情報誌、映像、玩具、イベントなど様々なメディアを、内容を連動させながら制作していた経験とイラストレーターさんやデザイナーさんなどの人脈は現職でも役立っています。とはいえ、学校の授業の教材を担当するのは初めてだったので、学習指導要領や教科書はイチから読み込んで学ぶことは転職後に新たにやったことです。

下村インタビュー

――大企業からスタートアップへの転職で給与や労働時間など働き方についての不安もあったと思います。

私は転職の条件として、給与は絶対に下げないと決めていました。その点は、事前の交渉で「前職の金額をキープする」ということで了承をいただいたので懸念はなかったです。働き方については、事前に残業時間について「できれば今(前職)と同じくらいがいい」という話をしました。ただ、制作職の場合、かかる時間は自分次第なところがありますよね。なので、会社からは「あなた次第です」という回答でした(笑)。

働き始めてみると、自己裁量が多く工数が少ないこともあり、現在は月20時間くらいの残業と前職より労働時間は減りました。編集職でこの時間はかなり少ない方ではないかと思います。空いた時間を活かして、副業で子どものワークショップを手がけるスタートアップをお手伝いしたこともあります。

子どもが生まれた後に仕事の進め方を変えたことで、効率良く仕事ができている面もあります。例えば、資料を作るときには紙にアイデアを発散させて骨子をつくり、それをデジタルに落とし込む過程で詰めていく。制作物は6割程度まで完成したら一回チームのメンバーに投げてみて、フィードバックを受けながら8割まで仕上げてクライアントに提出する。過不足があったらそれを踏まえて10割まで作り込んでいく、というやり方をしています。

ARROWSでは毎週月・火がオフィス出社日で、後はリモート勤務です。小4と中2の子どもがいるので、仕事は平日の8〜9時に開始し、18時には一旦終了します。残業は朝の時間か、出社日の夜にしています。私の場合、家庭の事情で出社日に朝早く出社するのが難しい日もあるので、朝会はリモートで参加し、10時頃出社させてもらっています。家庭の事情に配慮してくださるので本当にありがたいです。社内には、夫の転勤に付き添い、業務委託として契約形態を変えながらフルリモートで仕事を続け、活躍されている方もいます。何かあっても気軽に相談しやすく、対応してもらえるのは、安心して働ける要素の1つだと感じています。

「編集長」として、圧倒的な裁量とスピード感で仕事できる

――前職と同じく教材制作をしているわけですが、裁量やスピード感、ユーザーからの反応の違いなど前職と変わった点はありますか?

まず、裁量は圧倒的に広がりました。組織が大きいと上司の意向を反映することが大前提で、どうしても歯車の1つという感覚から抜け出せなかったのですが、今は自分がプロジェクトの中心として企業や先生とやりとりしながら、どんどん決めて作っています。

制作チームのメンバー一人ひとりが編集長のような役目ですね。もちろん制作過程では、上司に相談することもありますが、それが上司の正解を探るというのではなく、意見を求めるかたちというのも大きく変わった点です。

また、先生のニーズやクライアントの意向を踏まえながら自分が「こうしたい」と提案した制作物が世の中にそのまま出ていくことが、大きなやりがいにつながっています。制作した教材が実際に使用される授業見学をはじめ、アンケート、先生からのお手紙などを通じて、内容に対する評価がはっきりとわかるのも嬉しいですね。

先生から直筆のお手紙をいただくことも頻繁

良いものができた時にはすごく気持ちがいいですし、授業見学で作った教材が子どもたちにすごく受けているところを見ると「やった!」という気持ちになります。

個々に裁量がある分、当然仕事のスピード感も早くなりますが、違和感はないです。どちらかと言うと、何かを進めるために社内の決済を取ったり、誰かを説得するために社内資料を作らなければいけないようなことが全くなくなった分、スピードが速くなり気持ちいい。また、「SENSEI よのなか学」の教材はスライドをはじめ基本的にデータなので、工数のかかる紙媒体と玩具の制作より、少ない工数で仕事を進めることができています。

社会的な影響力という意味でも「SENSEI よのなか学」で学ぶ子どもたちも累計100万人を突破してさらに急拡大しているため、どんな媒体を手掛けている人であれ引けを取らない規模感で仕事ができると思います。なにより、会社として成長期にあり、社員が皆、前を向いて挑戦している風土で編集者として働くことは得難い経験ではないでしょうか。

求められるのは「作品作り」ではなく「子ども視点」の制作

――現在は少数精鋭のチーム体制で経営者との距離も近い分、その影響力が大きいと思います。下村さんから見て浅谷社長はどんな経営者・上司ですか?

浅谷さんは絶対に嘘をつかない。意思決定は「顧客である先生を起点」にしているため常に一貫していて、その時の気分で動くことがありません。何か意見を言われても、理由が明確なので納得できます。「上司がこう言うんだからやれ」というのは最も納得のいかない指示の仕方ですが、そういう理不尽なことは一切ないので、一緒に仕事をしていてフラストレーションがない。

そう話すと完璧な経営者のように思えますが、例えば朝が苦手だったり、人間味のある欠点もあります。社内では愛されキャラですね。以前、私が幹事になって社員の出産祝いのカンパを募った時に、忙しそうだったので浅谷さんにだけ声を掛けずにいたら、「なんで僕を入れてくれないんですか?」と気にしていて、申し訳ないことをしました(笑)。すごく温かみのある人です。

――今のお話しに出た「顧客起点」はARROWSとして追求している行動指針でもあります。そのような組織風土のもと「SENSEI よのなか学」の教材制作を担う編集者には、どんな人が向いていると思いますか?

私と同じように子ども向けの教材を制作してきた人であれば、子どもが喜ぶポイントや、子どもが集中できる時間、子どもの手を動かさせるタイミングなど、教材の組み立て方がすぐにわかると思います。

日産自動車と一緒に作成した教材では子ども向けの「下敷き」もディレクション

そうした経験がなくても、すでに「SENSEI よのなか学」の教材は30本以上ありますし、授業を見学すれば子どもの受け方の勘所などもつかむことは可能ですので、制作が好きな人であればではもちろん活躍いただけると思います。特に、何事にも好奇心をもって取り組める方、世の中の動向やトピックに幅広く関心がある方にはとても楽しい仕事だと思いますよ。

「顧客起点」という意味では、先生を助けたいというのは私もすごく共感しています。だけど、その先の子どもたちが「今日の授業、めっちゃ面白かった」と感じてもらえることが、一番の喜びです。その意味で、常に教材のエンドユーザーである子どもの視点に立って制作できる人にとっては、とても良い職場ではないでしょうか。

自分の意見に凝り固まったり、自分の作品が作りたい人ではなく、良い考えであれば周囲の意見も取り入れられるバランス感覚を持った人であれば、きっと楽しく仕事ができると思います。


profile

下村智子| 編集チーム

2005年株式会社ベネッセコーポレーションに入社。こどもちゃれんじ編集部にて幼児向けの教材制作に携わる。絵本、映像、学習ワーク、玩具、アプリ開発などさまざまなメディアで子どもの学びと成長を応援するコンテンツを開発。家庭向け教材のほか、幼稚園・保育園での学習教材や、アセスメントの開発なども担当。その後ダイレクトマーケティング、デジタルマーケティングに従事。新たな分野で教材づくりに挑戦したいと思い、2022年にARROWSに入社。特技はイラスト・漫画の制作。