顧客起点のマーケティングで「良いもの」を届ける喜び。現状の施策にとらわれず、より多くの先生をファンに

「先生から、教育を変えていく。」をビジョンに掲げ、学校教育の変革を推し進めるARROWSでは、同社の中核事業である「SENSEI よのなか学」を広めるためにマーケティングのさらなる拡大を図っています。今後マーケティングチームがどう期待されているか、今の業務内容はどのようなものか。2020年からチームを牽引する香山貴秀さんに詳しく聞きました。

ARROWS_香山インタビュー

「先生にファンになってもらうには何ができるか」を考え、実行する

――事業拡大フェーズにあるARROWSにおいて、先生に向けたマーケティングは要となる重要なポジションだと思います。事業全体において、どのような役割を担っていますか?具体的な業務内容も教えてください。

業務内容をお伝えする前に、まずは「SENSEI よのなか学」について説明が必要ですね。「SENSEI よのなか学」は、ARROWSと企業が協力して教材を制作し、それを全国の小中高の先生に無料で届け、授業の1コマとして使っていただくサービスです。

先生方は今、高校の家庭科に金融教育が加わるなど、教えなくてはいけない領域が拡大し、自分たちの知識・経験・時間が追いつかないという課題に直面しています。また先生方は、社会と接点を持つ機会を子どもたちにもっと多く提供したいという問題意識も持っています。どうすればこれらの課題を解消し、先生の負担を軽減しながら、学校教育をより良くすることができるか。この問いに対してARROWSが出した答えのひとつが、「SENSEI よのなか学」でした。

どの企業も、独自の知見や技術を持っています。「SENSEI よのなか学」は、これらの“企業知”を社会的課題の視点から切り出し、公共性の高い“学び”に変えて、子どもたちに発信しています。これまで、Googleや日産自動車、集英社やサントリーなどのトップ企業とタッグを組んでオリジナル教材を制作。授業実施学校数は約1万校・47都道府県を網羅。受講生徒数は累計100万人以上です。

マーケティングチームは、先生方とのコミュニケーション全般を担います。ひとことで言うと、「先生に『SENSEI よのなか学』のファンになってもらうためには何ができるか」を考え、実行すること。これが役割です。

現状の業務でも、もちろんそのための取り組みを日々改善して行っていますが、今後期待されているのは、既存のやり方だけにとらわれず、もっとフラットに考えて新しいやり方にもチャレンジしていくことです。

現状の業務は、①プロモーション②カスタマーサクセスの2種類に分かれます。

①プロモーション(以下プロモ)は、全国の先生方に「SENSEI よのなか学」の教材を使っていただくために、戦略を立ててコミュニケーションする業務です。教材がリリースされた際には「こういう教材ができました、ぜひ利用してください」とお伝えしますが、いつどうのように伝えるのが最適か、常にPDCAを繰り返しています。現状は、告知用のHTMLメールやFAX、ランディングページ(以下LP)などの広報物を制作し、登録している先生方のリストから対象を抽出して、送信するのが主な流れです。今後はこれらに限らず、先生たちにファンになっていただき、利用していただくためにはそもそも何ができるか、いろんな方向性で考えて取り組みたいと思っています。

②カスタマーサクセス(以下CS)の業務は2種類あります。ひとつはサポート対応です。先生からの問い合わせに回答し、授業実施をフォローします。「この教材はどうやって使えばいいですか」「他の先生に共有したいのですがいいですか」など多岐にわたるご質問に、一つひとつ返していきます。

CSのもうひとつの仕事は、リレーション強化です。具体的には、実際に授業を見学させてもらったり、先生方と情報交換の場を持たせてもらったりします。

これらのCSの業務は、先生と直接やりとりすることを通じてファンになってもらうことを目指すのはもちろん、直接先生のニーズをうかがえるとても貴重な機会です。ただ受動的に対応するのではなく、先生のアクションや言葉の意図を読み取り、社内に適切にフィードバックすることで先生たちへの提供価値を向上させることが期待されています。

チームメンバーは現在3人です。私がプロモ、他の2人がCSという大まかな住み分けはあるものの、関連する業務が多いため、全体のスケジュールや細かいタスクの分担は3人で話し合って決定し、お互いにアドバイス・相談・手助けしながら、協力して業務にあたっています。

――プロモやCSの実行を一手に担っているのですね。マーケティング戦略を立てているのは別のチームですか?

いえ、マーケティングの企画立案も、私たちマーケティングチームの仕事です。

ARROWS香山インタビュー

広報物の制作は、ただ教材の中身を簡潔に説明すればいいというわけではありません。先生方が今どういう悩みを抱えているか、どういうメッセージを発信すればその教材を申し込んでくれるかを考えて、文面やデザインを練っていきます。

また、申し込み率や問い合わせ数は、学期や配信のタイミングによっても変わります。よって、プロモ業務は、運用型広告のように先生方の反応を都度見ながら、仮説検証のサイクルを回しています。

授業見学や先生方との対話で得られた現場の生の声を、組織や事業全体に反映させていくのも、私たちマーケティングチームの役割です。

「今回の教材にはこういう課題があった」というフィードバックや、「こういうサポートが欲しい」というニーズを引き出し、教材制作を担当する編集者チームや、教材を共同制作するクライアント企業と向き合う営業チームと共有して、チーム間で連携しながら教材とサービスの向上に取り組んでいく――マーケティングの基本であるターゲット理解を追求することが、ARROWS全体を牽引する起点になっていると言えるでしょう。

このようにマーケティングチームは、マーケティングの企画立案から施策までを一気通貫で担います。まさに、「先生にファンになってもらうには何ができるか」を考え、実行することが、私たちの役割なのです。

良いものを届けるから、本質的な仕事ができる

――香山さんは、どんな経緯でARROWSに入社されたのですか?

実は、入社前にARROWS社長の浅谷さんから声をかけられて、本業の定時後にお手伝いしていたのですが、次第に「子どもたちの教育に関わることは片手間でやるべきじゃないな」いう気持ちが強くなりました。

また、ARROWSはビジネスモデルやサービスなど、作るものすべてが史上初だったので「今やっていることより面白いな」とも感じました。加えて、自分のこれまで積み上げてきたダイレクトマーケやインバウンドマーケやインサイドセールスのノウハウや知識が活かせるという実感もあり、正式にメンバーに加わりました。

前職の給与水準を維持してもらえるということも、決め手のひとつでした。ARROWSは、学校教育の変革という社会課題を本気で解決したいからこそ、事業をビジネスとして成立させることにこだわっています。その上での社長の方針「優秀なプレイヤー達にジョインしてもらうために、ふさわしい対価を払うのは当然のこと」という言葉も納得感がありました。ARROWSにジョインいただくことを検討されている方も、ベンチャーだから給与が低いと心配する必要はないと思います。

――実際に入社してみて、どうでしたか?

ARROWS_香山インタビュー

初めて授業見学に行って、自分が関わった教材を実際に子どもたちが使っている様子を自分の目で見たときは、嬉しさや社会的意義、責任感に圧倒されて、本当に身体が震えました。

一般的なマスマーケティングでは「作って届けたらおしまい」となることもあり、エンドユーザーの反応を直接的に知る機会がない場合もあります。しかしARROWSの場合は、日常的に行われる授業見学や先生とのコミュニケーションを通じて、自分たちが生み出したものが本当に先生や子どもたちに届いているんだということを実感できます。

――「サービス」に自信を持っているからこそ、喜びもひとしおですよね。

その通りです。自分の子どもにも授業を受けてもらいたいと思っているぐらい、私たちは、「SENSEI よのなか学」の教材は先生や子どもたちにとって良いものであると、胸を張って言えます。

先生方に告知するときは同じ教材について何回かメールを送るのですが、「貴重な情報を届けてくれてありがとう」と言ってくださる先生方もいるんですよ。教材の申し込みフォームにわざわざ書いてくれるんです。何回も同じ内容のプロモを送ったら普通は「もういいよ」と嫌がられるところを、肯定的に捉えてくださる先生がいらっしゃるんですよね。これも私たちの教材やサービスが先生の役に立っているということを端的に表していると思います。

目標に達するために誇大広告ぎみに宣伝したり、コンバージョンレート(CVR)を見て「今だけ!」というように購買意欲を掻き立てたりする必要は一切ありません。サービスの価値をそのまま伝えれば人の心を動かすことができる。自信を持ってサービスを勧めることができる。これは極めて貴重なことだと思います。

「顧客起点」のマーケティングを磨き、新たな地平を切り開く

――プロモーションとCSを軸に、マーケティングの上流から下流までを一手に担うマーケティングチームでは、どのようなスキルとマインドセットが求められますか?

いちばん必要なのは、「『顧客起点』で考えることができるか」というマインドセットです。「なぜやるのか」と聞かれたときに、「自分がやりたいから」ではなく、「先生がこう思っているから」「子どもたちが求めているから」と、先生や子どもたちを主語にして考えることが大切だと考えています。

表面的な数値を伸ばすことだけに喜びを感じる人、研究職的な発想でデータや仕組みの検証だけに重きを置く人は、フィットしないかもしれません。なぜなら、私たちにとって、数字はただの数字ではないからです。数字は、一人ひとりの先生であり、子どもたちである。数字を伸ばすことは、もっと多くの先生や子どもたちに学びの機会を届けることを意味する。この精神は、ARROWSのメンバー全員が共有しています。

その上で、プロモーションの経験が豊富な方は特に活躍いただけそうですね。きちんとした日本語が書けることは大前提。さらに、ラフが描けたりといったように、クリエイティブなスキルがある方、自分で手を動かしてものをつくることが好きな方ならフィットする環境です。

ARROWSマーケティングチーム
マーケティングチーム。気さくに相談し合えるメンバーたち

――「顧客起点」の他に、重視しているマインドセットはありますか?

仕組みづくりを楽しめる人にぜひ加わってほしいと思っています。なぜなら、できることはまだまだあるからです。何をするべきかの整理を含め、これからいろんなチャレンジができるフェーズです。

例えば、Webのアクセス解析にはまだかなり検討の余地があります。どのようなメッセージやデザインの広報物に訴求力があるかという定量的・定性的検証も着手したばかりですし、そもそもメールやFAX、LP以外に、もっと良い告知媒体があるかもしれません。

リピート率にも課題があります。「SENSEI よのなか学」の授業を実施した先生の93.3%から「またやりたい」という声をいただいているにも関わらず、2年、3年と連続して使ってくださる先生方が想定よりも多くはないという事実も見えてきており、この原因の検証も、これからの課題です。

ARROWSは、裁量と自由度が圧倒的に高い環境です。現状を批判的に捉えることは歓迎され、優れたアイデアは積極的に採用されます。常に新規案件が発生し、かつ少人数で意思決定が早い組織なので、仮説検証のサイクルを高速で回すこともできる。この過程で、マスマーケティングとOne to Oneマーケティングという、対極にある視点を同時に持ちながら顧客にアプローチするスキルも身に着くでしょう。

本当に、できることはまだまだ山ほどありますし、私自身、これからも挑戦し続けていきたいです。先生と子どもたちのために、新たな地平を切り開いていくスキルと意欲がある方と、一緒に働きたいですね。


profile

香山貴秀プロフィール

香山貴秀|マーケティングチーム

2002年株式会社ベネッセコーポレーションに入社。ダイレクトマーケティングに従事。 2008年 販売責任者(当時最年少)、2012年 こどもちゃれんじ・進研ゼミWebサイト責任者などを歴任。 その後、人材業界、広告代理店などでマーケティング責任者、ストラテジープランナーとして顧客との最適なコミュニケーション開発などに関わる。2020年よりARROWSに参画。